
生成AIを使ったHTML/CSSコーディングが当たり前になり、
「コードを書くスピード」そのものは、以前よりも確実に上がりました。
一方で、こんな感覚はありませんか?
・その場では便利だったはずのCSSが、あとから触れなくなる
・生成AIが書いたコードを、結局すべて読み直すことになる
・「AIが進化すれば、設計はいらなくなるのでは?」という不安
この記事では、
生成AIの有無に関係なく、長く使われ続けるCSS設計の本質を、
実務の視点から整理していきます。
流行のツールや書き方ではなく、
なぜそのCSSは生き残り、なぜ別のCSSは重荷になるのか
その違いに焦点を当てます。
AIが進化しても「CSSが壊れる理由」は変わらない
生成AIが登場しても、CSSが壊れる理由そのものは、実は変わっていません。
壊れるCSSの多くは、
- どこまで影響するか分からない
- 直したい箇所だけを触れない
- 変更のたびに別の場所が崩れる
といった「設計の問題」を抱えています。
生成AIはコードを書く速度を上げますが、
影響範囲の整理や責務の切り分けを自動で保証してくれるわけではありません。
むしろ、設計が曖昧なままAIを使うと、
問題のあるCSSがより速いスピードで量産されることもあります。
生成AIが書いたCSSでまず確認したいのは、「この指定は、どこまで影響するのか」です。
一見すると無難に見えるCSSでも、 影響範囲が広すぎると、後工程で意図しない副作用を生みやすくなります。
- どのページ・どのコンポーネントに効くのかが分かりにくい
- Bootstrapの既存クラスを不用意に上書きしてしまう
- 「今は問題ない」が後で事故につながりやすい
影響範囲が広いCSSのサンプル
/* 生成AIでありがちな「広すぎる指定」 */
p { line-height: 1.9; }
a { text-decoration: none; }
img { max-width: 100%; }
/* 特に危険:Bootstrapなど他のフレームワークと衝突しやすい名前 */
.container { padding: 24px; }
.wrapper { width: 100%; }
CSS設計の本質は「人が読むための構造」にある
CSS設計の本質は、
「ブラウザに正しく解釈させること」ではありません。
本質は、
人が読んで、意図を理解できる構造になっているか
という点にあります。
たとえば、
- このクラスは何の役割なのか
- どこまで影響する前提なのか
- どの変更が想定されているのか
こうした情報が、コードから自然に読み取れるCSSは、
時間が経っても扱いやすいまま残ります。
逆に、見た目だけを成立させたCSSは、
生成AIで書いたかどうかに関係なく、
いずれ「触れないコード」になります。
生成AIは「確実にスタイルを当てる」ため、 セレクタを必要以上に強く書く傾向があります。
CSSの仕組み上、詳しく書かれた指定ほど優先されるため、 後からの修正が思うように効かなくなります。
- セレクタが長く、詳細度が高すぎる
- 普通の上書きでは勝てなくなる
!importantに頼る悪循環が生まれる
優先順位が厳しすぎて修正、流用が難しくなるCSSのサンプル
/* AIが「確実に当てたい」気持ちで書きがちな指定 */
.page .content .card-list ul li a.button {
background: #0d6efd;
color: #fff;
}
/* 後から “普通に” 上書きしても勝てない */
.button {
background: red; /* 反映されない */
}
陳腐化しやすいCSSの共通点
時間が経つほど扱いづらくなるCSSには、共通する特徴があります。
- 見た目とレイアウトが1つのルールに詰め込まれている
- 影響範囲がクラス名から想像できない
- その場しのぎの上書きが積み重なっている
- 「なぜこの指定があるのか」がコードから分からない
これらはすべて、
設計上の判断がコードに残っていないことが原因です。
生成AIは、完成形を目指してコードを書くため、
こうした「判断の背景」を省略しがちです。
メンテナンスしづらいCSSを見返すと、 見た目と配置の役割が1つのセレクタに詰め込まれていることがよくあります。
AIは完成形を最短で作ろうとするため、 「あとで分けて管理する」という視点が抜け落ちがちです。
- 色・余白・配置・装飾が1か所に集まる
- 「色だけ変えたい」ができない
- 触ると他も壊れそうで手が止まる
1つのセレクタに詰め込まれているCSSのサンプル
/* 見た目とレイアウトが全部入り */
.hero {
background: #111;
color: #fff;
padding: 64px 24px;
text-align: center;
border-radius: 16px;
box-shadow: 0 12px 24px rgba(0,0,0,.25);
}
AI時代にこそ価値が上がる設計判断
生成AIが普及したことで、
CSS設計の中でも、特に価値が上がった判断があります。
- 責務をどこで分けるか
- どの単位で再利用するか
- どこまでをルールとして固定するか
これらは、ツールが進化しても自動化しきれない領域です。
生成AIは、
「どう書けば見た目が成立するか」は得意ですが、
「なぜこの構造を選ぶのか」という判断は、文脈なしではできません。
だからこそ、AI時代でもCSS設計は陳腐化せず、
むしろ人の判断価値が相対的に上がっています。
CSS設計が整理されていると、 生成AIは余計な判断をせずにコードを書けるようになります。
重要なのは、AIを賢くすることではなく、 迷わなくていい状態を作ることです。
- 役割(構造)と見た目が分離されている
- 修正指示を具体的に出しやすい
- 生成AIとのやり取りが安定する
設計を生成AIに認識したうえで生成したCSSのサンプル例
:root{
--space-3: 1rem;
--radius-2: .5rem;
}
.card{
padding: var(--space-3);
border-radius: var(--radius-2);
}
.card--primary{
background: #0d6efd;
color: #fff;
}
.card-list{
display: grid;
gap: var(--space-3);
}
生成AIは「設計思想」を代替できない
生成AIは、設計思想そのものを理解しているわけではありません。
学習データに含まれる「それっぽい正解」を、
状況に合わせて再構成しているにすぎません。
だから、プロンプトが曖昧だと、
曖昧な設計のコードが返ってきます。
逆に言えば、
設計思想が明確な現場ほど、生成AIは強力な補助輪になります。
AIは設計を代替する存在ではなく、
設計を前提に使う存在だと整理すると、付き合い方が安定します。
まとめ|CSS設計は、これからも人の仕事
AI時代でも陳腐化しないCSS設計の本質は、
特別な書き方や最新技術ではありません。
「人が読んで判断できる構造になっているか」
この一点に集約されます。
生成AIは、
コードを書く作業を確実に楽にしてくれます。
ただし、設計まで肩代わりしてくれるわけではありません。
だからこそ、
CSS設計はAI時代になっても価値を失わず、
むしろ重要性を増しています。
次に生成AIにコードを書かせるとき、
「このCSSは、半年後の自分が読めるだろうか?」
その問いを一度だけ挟んでみてください。
それが、AI時代でも陳腐化しないCSS設計への、
一番シンプルで確実な入口です。




