前回の記事では、生成AIが
「考えているように見える理由」を整理しました。
仕組みが分かってくると、
次に気になるのはこの点ではないでしょうか。
「結局、どこまでAIに任せていいのか?」
「逆に、やらせないほうがいいことは何か?」
この判断があいまいなままだと、
生成AIを過信して失敗したり、
逆に怖がって使えなくなることが起こりがちです。
この回では、
生成AIの得意なこと・苦手なことを整理し、
実務での判断軸を一緒に作っていきましょう。
目次
生成AIが得意なこと
生成AIが得意なのは、
すでにある情報をもとに、形を整える作業です。
具体的には、次のような作業が挙げられます。
- 文章の言い換え・要約
- 構成案や見出しのたたき台作成
- アイデア出し・発想の広げ役
- 定型的な文章(案内文・説明文)の作成
これらは、
「正解が一つではない」作業です。
生成AIは、
もっともらしいパターンを大量に学習しているため、
こうした作業をスピーディーにこなせます。
生成AIがこうした作業を得意とする理由は、
その中核にある大規模言語モデル(LLM)の性質にあります。
LLMは、ディープラーニングによって、
人間が書いた膨大な文章を学習しています。
その結果、
「どんな流れの文章が自然か」
「どう並べると分かりやすいか」
といった文章の型やパターンを、
非常に高い精度で再現できます。
だからこそ、
言い換え・要約・構成づくりといった
表現を整える仕事は得意なのです。
生成AIが苦手なこと
一方で、生成AIが苦手なのは、
正確性や責任が求められる判断です。
代表的な例は次のとおりです。
- 最新情報の正確性を検証すること
- 計算結果や数値の最終判断
- 法律・契約・医療などの専門判断
- 著作権や商標権などの権利侵害の有無の判断
近年の生成AIは、
Webブラウジング機能を使って
最新情報を取得することはできるようになっています。
ただし、
その情報が正しいかどうかを保証することはできません。
正確性の検証は、最終的に人が行う必要があります。
また、生成AIは計算機ではなく、
言葉のつながりを予測するAIです。
数学的に解いているわけではないため、
計算や数値は特に注意が必要です。
これは、生成AIが
ディープラーニングを使った言語モデルであり、
計算専用のプログラムではないためです。
数式を理解して解いているのではなく、
「この数字の次には、どの数字が来やすいか」
を確率的に予測しているにすぎません。
そのため、
計算や数値の正確性が重要な場面では、
人の確認が欠かせません。
任せてよい仕事の考え方
生成AIに任せてよいかどうかは、
「仕事の性質」で考えると分かりやすくなります。
任せやすいのは、
次のような特徴を持つ仕事です。
- 間違いがあっても致命的にならない
- 最終的に人がチェックできる
- たたき台や下書きが欲しい
Web運営であれば、
ブログ記事の構成案や、
説明文の言い換えなどが該当します。
人が必ず確認すべき仕事
逆に、
人が必ず関わるべき仕事もあります。
それは、
責任の所在が人にある仕事です。
- 最終的な意思決定
- 公開前の事実確認
- 法的・倫理的な判断
この考え方は、
ヒューマン・イン・ザ・ループ(Human-in-the-loop)
と呼ばれます。
AIに任せきりにせず、
必ず人が確認・判断するプロセスを組み込むことが、
安全な活用の前提です。
LLMとディープラーニングの特性を踏まえると、
判断軸はとてもシンプルです。
「表現・構成・発想」はAIが得意。
「正確性・責任・権利判断」は人の役割。
この切り分けができていれば、
生成AIは非常に扱いやすい道具になります。
試験で押さえるポイント
- 生成AIには得意・不得意がある
- 最新情報は取得できても、正確性の検証は人が行う
- 計算は確率的予測であり、誤る可能性がある
- ヒューマン・イン・ザ・ループの考え方が重要
実務・Web運営での判断につながる視点
Web運営の現場で考えてみましょう。
-
得意:
ターゲットに刺さるキャッチコピー案を20個出す -
苦手:
そのコピーが他社の商標権を侵害していないか判断する -
得意:
ブログ記事の導入文を、です・ます調で柔らかく書き換える -
苦手:
記事内で引用した統計データが、2025年最新の正しい数字か確認する
生成AIは、
検索エンジンの代わりではなく、
考えを整理するパートナーとして使うと、
リスクが低く、効果が高くなります。
まとめ|判断できるようになることがゴール
ここまで、STEP1として
生成AIの基礎となる考え方を、段階的に整理してきました。
振り返ってみると、STEP1では次のようなポイントを学んできました。
- AI・機械学習・ディープラーニングの関係性(入れ子構造)
- 生成AIは「考えている」のではなく、確率にもとづいて生成していること
- 大規模言語モデル(LLM)が、文章の型や流れを学習していること
- 生成AIには、得意なこと・苦手なことがはっきりあること
- 判断の責任は、最終的に人が持つという前提
ここまで理解できていれば、
生成AIを過信することも、怖がる必要もありません。
「これはAIに任せてよい」
「ここは人が必ず確認する」
そうした判断軸を、
すでにあなたは持っています。
次からSTEP2として、
いよいよ具体的な生成AIツールに進みます。
ChatGPTだけでなく、
Gemini、Copilot、Perplexityなど、
それぞれのツールが
「どんな役割に向いているのか」
を整理していきます。
STEP1で身につけた考え方があれば、
ツールの違いに振り回されることはありません。
「自分の目的に合うかどうか」
を判断しながら、安心して読み進めてください。
次回は、
「生成AIツールの全体像」を解説します。
ここからが、実践編のスタートです。




