生成AIパスポートの学習を進めていくと、
「人工知能の歴史」という言葉が出てきます。
ここで少し身構えてしまう方もいるかもしれません。
ですが安心してください。
試験で求められているのは、年号や研究者名を細かく暗記することではありません。
AIの考え方が、どのように変化しながら現在の生成AIに至ったのか。
その流れを理解することが目的です。
この回では、生成AIパスポートのシラバスでも使われる
「第1次〜第3次AIブーム」という整理を意識しながら、
歴史を「意味のある流れ」として解説していきます。
目次
なぜAIの歴史を学ぶのか
「今の生成AIが使えれば、昔の話は知らなくてもいいのでは?」
そう感じる方もいるかもしれません。
ですが、試験でも実務でも重要なのは、
AIの得意・不得意が、どこから来ているのかを説明できることです。
歴史を知ることで、
「なぜAIはこういう答え方をするのか」
「なぜ間違いが起きるのか」
が理解しやすくなります。
これは、生成AIを安全に使うための判断軸にもつながります。
ルールベースAIの時代(第1次・第2次AIブーム)
人工知能の初期は、ルールベースAIと呼ばれる考え方が中心でした。
これは、人があらかじめルールを決め、
「もしAならB」という条件分岐で処理を行う方式です。
この考え方は、第1次AIブーム(1950〜60年代)から
第2次AIブーム(1980年代)にかけて発展しました。
第1次AIブームは、
「トイ・プロブレム(おもちゃの問題)」と呼ばれる、
ルールが明確な課題を解く研究が中心でした。
- 迷路の最短ルート探索
- チェスや将棋の簡単な局面
- ハノイの塔などのパズル
「もし右が壁なら左へ進む」といった、
単純な命令の組み合わせで解ける問題は得意でしたが、
日常の複雑な判断には対応できませんでした。
続く第2次AIブーム(1980年代)では、
エキスパートシステムが注目されます。
これは、専門家の知識や判断を大量のルールとして登録し、
コンピュータに再現させようとしたものです。
- 医療診断支援:症状を入力すると病名を推測する
- 融資審査:年収や勤続年数などから貸付可否を判断する
ベテラン社員の判断基準を
マニュアル化して覚えさせたイメージです。
しかし、「マニュアルに書いていない常識的判断」ができないという
壁にぶつかります。
この問題はフレーム問題と呼ばれ、
ルールベースAIの限界として知られています。
機械学習が登場した理由(第3次AIブーム)
「すべてを人がルールとして教えるのは無理がある」
こうした反省から登場したのが機械学習です。
機械学習では、
人が細かいルールを書くのではなく、
大量のデータからAI自身が特徴を見つけ出します。
この考え方が実用化され、
大きく広がったのが第3次AIブーム(2010年代以降)です。
身近な例としては、次のようなものがあります。
- 迷惑メールの自動振り分け
- クレジットカードの不正利用検知
- 需要予測や売上予測
人間が「この単語が入っていたら怪しい」と指定しなくても、
AIが大量のメールを見比べて
「怪しいメールに共通する特徴」を自動で学習します。
こうしたAIは、
分類・予測・判定を得意とし、
識別系AIとも呼ばれます。
ディープラーニングによる転換点
第3次AIブームをさらに加速させたのが、
ディープラーニング(深層学習)です。
ディープラーニングは、
多層構造のモデルを使い、
人間が気づきにくい複雑な特徴まで扱えるようにしました。
代表的な出来事が、2016年の囲碁AI「AlphaGo」です。
世界トップ棋士に勝利したことで、
AIが人間の直感を超える判断を行えることが示されました。
さらに2017年には、
Googleが発表したTransformer(トランスフォーマー)という技術が登場します。
これにより、大量の文章データを効率よく学習できるようになり、
現在の生成AIにつながっていきました。
生成AIが生まれた背景
ディープラーニングとTransformerの発展により、
AIは「分ける・判定する」だけでなく、
新しい文章や画像を生成することが可能になりました。
これが、生成AIです。
生成AIは、従来の識別系AIとは異なり、
新しいデータを作り出す役割を持っています。
一方で、生成AIは意味を理解しているわけではありません。
そのため、事実ではないことを、
あたかも事実のように出力してしまうことがあります。
これをハルシネーション(幻覚)と呼びます。
この性質は、後のSTEPで扱う
リスク・法務・倫理の理解につながっていきます。
試験で押さえるポイント
「人工知能の歴史」については、次の整理ができているかが重要です。
- 第1次・第2次AIブーム:ルールベースAI、エキスパートシステム
- 第3次AIブーム:機械学習・ディープラーニング(識別系AIの進化)
- 生成AI:ディープラーニングを応用し、「識別」から「生成」へ進化
年号よりも、
「知能の中心がどこにあるか」が、
人のルールからデータへ移った流れを説明できるかがポイントです。
実務・Web運営につながる視点
Web運営や業務で生成AIを使うと、
「なぜ毎回少し違う答えになるのか」
と感じることがあります。
それは、生成AIがルールではなく、
学習データと確率にもとづいて生成しているからです。
この前提を理解していれば、
「AIに任せすぎない」
「最終判断は人が行う」
という使い方が自然にできるようになります。
まとめ|歴史は「流れ」で理解する
今回は、人工知能の歴史を、
第1次〜第3次AIブームの流れとして整理しました。
今日のポイントは次の3つです。
- 初期AIは人がルールを書く方式だった
- 第3次AIブームで、学習の主役がデータになった
- 生成AIは識別系AIとは異なり、新しい情報を生成する
生成AIは、こうした技術を背景に、
「分ける(識別)」だけでなく、
新しい文章や画像を作る(生成)役割を持つようになりました。
ただし、生成AIは意味を理解しているわけではありません。
そのため、事実ではないことを、
あたかも事実のように出力してしまうことがあります。
これをハルシネーション(幻覚)と呼びます。
この性質は、後のSTEPで扱う
リスク・法務・倫理の重要な前提になります。
次回は、
「機械学習とディープラーニングの違い」を、
もう一段かみくだいて整理していきます。
この流れが分かれば、試験も実務も一気に楽になります。



